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第3節 保育の目標 私たちの目あて2.大切な人と、ともに生きるここまで何度も取り上げてきたように、子どもは自分をとり巻く人たちの中で大きくなってゆきます。うれしいことやつらいことに出あったとき、周囲の人から共感してもらい、ときには慰められて、うれしいことを自分にとってうれしいこととして、つらいことを自分にとってつらいこととして、自分の中に収めてゆきます。子どもは、幼ければ幼いほど周囲の人の言動によって自分の行動が左右されますが、大切なのは目に見える行動だけではなく、その行動を動かす気持ちや思いです。気持ちや思いは心にその根があります。うれしくなったり、つらいと感じたり、もう一度やってみようと思ったり、諦めてしまったりといった感情や意欲のもとになる心が育まれることこそが、重要なのです。
でも心は、やさしくなれるときもあればなれないときもあります。強いときもあれば弱いときもあります。そのように揺れ動きながらも、少しずつ子どもは、"ぼくはほかの誰でもない僕なんだ"、"私の人生の主役は、私自身なの"というように、自分を信頼し、自分を大切にして、生きてゆけるようになります。このときにはすでに、子どもの中にもう一人の自分は誕生していて、本来の自分と葛藤を開始しています。その葛藤の繰り返しの中で、もう一人の自分は鍛えられてゆくのですが、その葛藤も元はといえば、周囲の人々とのあいだに生まれる共感や軋轢に端を発しています。ですから、周囲の人がどのような人なのかは、一人ひとりの子どもにとってとても重要であることがわかります。その重要な周囲の人とは、まずは家族です。そして、家庭において家族であるように、こども園において重要な周囲の人は保育者なのですが、家庭に兄弟姉妹がいるように、大人との関係において同じ立場に立つ友だちが、こども園にはいてくれます。
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