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第2節 保育室と育ちの区分4.本館3歳以上児クラスの子どもたちの育ち3歳から就学までを想定した保育的環境が、室内外だけでなく鎮守の森や地域社会も含めて準備される3つの3歳以上児クラスは、それぞれ約40名の子どもたちによって構成されます。3名の保育者も加わり、その関係の網の目は、多様な縦糸、横糸によって織りなされます。このように多年齢にまたがって子どもが生活するクラスでは、大きい子どもが小さい子の面倒を見てあげる、小さい子どもが大きい子にあこがれて育つなどといわれます。たしかにそのような場面も少なからず見受けられますが、岩屋こども園アカンパニの場合は、遊びや活動に合わせて、子どもたちが自分たちで仲間を形成していることが特徴的です。
ですから、たいていは年齢の近い子どもたちが集まり、思い思いに遊びこんでいますが、大きい子が小さい子を仲間に入れたり、手助けしたりする場合も、それを大きい子どもからの一方的な援助、あるいは小さい子の依存とみるのではなく、そこに仲間関係が成立し、たとえば小さい子から頼られて手助けする大きい子も、頼られることで自分を発揮していると考えれば、大きい子もまた小さい子によって自分が活かされるよろこびを味わうことがわかります。
興味や関心が掻き立てられて遊びや活動が始まりますが、そこに集まる子どもたちの関係は、必ずしも"一緒が楽しい"ことを初めから理解しているわけではなく、〈取る:取られる〉というような負の関係から始まり、やがてはそれを超えて仲間になるような場合も少なくありません。
その一つは、自分で自分の気持ちを立て直すことです。3歳以上児のクラスでは、思い通りにいかないこともしばしばです。しかも思い通りにいかないことを乗り越えて子どもは育つと保育者は考えていますから、容易ではありません。その厳しさも伴ったクラスの中で過ごすためには、周囲の人に援けられながらも自分で自分の気持ちを立て直すことを学び取ってゆかなければなりません。それはなかなか困難なことではありますが、その経験によって自分もまたいつか、他者を支援するようになり、やがては協同して何かに取り組むことの楽しさを知るようになります。協同する場では、他者の思いや気持ちも受け入れることが求められもして自分の思い通りにならないこともしばしばですが、それがお互いさまだということに、やがては気づいてゆきます。このようにして子どもたちは、ほどほどの人との付きあいを身に引き受けてゆきます。
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