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第1節 期ごとの保育第4期 私たちを表現する(12月第2週から3月第2週まで)2.印象と表現ゆたかに表現するためには、ゆたかな印象を享けることが必要です。乳幼児期の子どもに不可欠なゆたかな印象を自然・人・文化に分けて概観します。 自然では、陽光や風、雨、雪といった体感できる自然がなにより重要です。陽光は日陰があることでよりゆたかに感じ取ることができるでしょうし、寒い冬の暖かい陽射しと、暑い夏、アスファルトに照りつける太陽では、その印象はまったく違ったものになるでしょう。木々を渡る風もあれば砂埃を舞い上げる強い風もあります。夏には涼風となり、冬には寒風吹き荒ぶことになり、風もやはり季節によって印象が異なります。雨や雪も大切な保育の自然素材です。岩屋こども園アカンパニでは雪遊びはほとんどできませんが、雨の日のお散歩のためにレインコートや雨傘が用意されています。
このように、光を感じる、風を感じる、雨に濡れる、雪で遊ぶといった体験が、自然に目を向けたときにまずは浮かぶ印象ではないでしょうか。それらはまた、音として体感されるものでもあります。風や雨は直接耳に届く音ですし、陽光や降雪も、きらきら輝く、しんしんと降り積もるなど、音声に置き換えて表現することで、自然が奏でる音のハーモニーを感じ取ることができます。子どもが扱える自然として、土や砂、水、粘土、小石、木切れ、葉っぱなどの自然素材も重要ですし、草花を育てたり、野菜を収穫したり、それを食したりと、自然の恵みもまた、大切な印象群でしょう。
周囲の人から享ける印象も大切です。表情、しぐさ、言葉、動き、着衣、髪型、匂いなど、人という生きものの発するシグナルもやはり、知らず知らずのうちに少なからぬ印象を与えます。 それはぬくもりや、やすらぎであるときもあれば、かたさや怖さとしてやってくる場合もあることでしょう。そのような周囲のひとたちと子どもはともに暮らしていくのです。
乳幼児期の子どもたちに子どもが自ら創造する児童文化を多く求めることはできませんが、大人が子どものために用意してきた児童文化であれば、枚挙に暇がありません。歌や、踊り、手遊びなど音楽領域のものや、絵画や工作といった美術の分野も日々の保育に欠かせません。こま回しや凧揚げ、かごめかごめ、鬼ごっこなどの伝承遊びも伝えていきたい文化ですし、子どもたちが砂場やままごとコーナーなどでみせる象徴遊びなどは、子どもが自ら創りだせる文化ですから、やはり絶えることのないような配慮が必要です。子どもにとって遊ぶことこそゆたかな表現の源泉です。
このように考えると、印象と表現は子どもの遊びの中で渾然一体となっています。それがもっとも端的に現れるのが、歌です。たとえ一人で口ずさんでいても、自分の歌を自分で聞いているのですから、そこには印象と表現が同時に起こっていることになります。子どもの場合、印象の多くは体験から得られますが、体験はまた表現でもあるので、子どもにとっての印象と表現は分かつことのできないものなのです。 |