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第1節 期ごとの保育第4期 私たちを表現する(12月第2週から3月第2週まで)4.技法と表現遊びを子どもの行為の側面からみると、真似る、話す、扱う、作る、描く、歌う、踊る、演じる、競うなどは、伝えるための手立て=表現媒体を必要としますし、媒体を用いるためには技法を習得する必要が生じます。ここに"教える"や"指導する"ということが起こるのでしょうが、運動的な遊び、ゲーム的な遊び、ごっこ的な遊び、あるいは描画、工作、歌、踊り、芝居などといった活動において、保育者は指導的立場に立ちますが、小学校以上の学習とは異なり、まずは一緒にやってみることで面白さや不思議さ、驚きといった情動を共有することから始めなければなりません。そして取り組んでいる遊びや活動がより興味深いものとなるように、協力して工夫を重ねるのです。その工夫のうちに子どもが教わるということ、学ぶということが混じり込んで、子どもは技法を習得していきます。
ですから、何を教えるかがあらかじめ用意されるのではなく、いっしょに遊び、一緒に取り組むことの過程に必要が生じて、伝えたり手伝ったりといったことが起こります。その具体的な内容は保育者が即興的に思いついてやってみるよりほかありません。
保育活動の真の目的は、描画で描画を教えるのではなく、オペレッタでオペレッタを教えるのでもなく、鬼ごっこで鬼ごっこを教えるのでもありません。子どもが表現したいと思う意欲を汲み取って、その意欲を実現することで、描画で描くことの楽しさを、オペレッタで歌い踊ることの快感を、鬼ごっこで走ること、逃げること、競うことの面白さを伝え、意欲の水瓶を子どもの心に醸成するのです。描画で生の技法を、オペレッタでも生の技法を、鬼ごっこでも生の技法を伝えるのです。 |