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くすのきの家の1階はおもに1歳前半の子どもたちが生活し、2階はおもに0歳の子どもたちが過ごす環境になっています。1歳後半の子どもたちには次に紹介する「けやきの家」が用意されています。この3つの保育空間の年月齢区分は、年度ごとの子どもの在籍状況や子どもの育ちに合わせて決められます。ですから年度の途中にくすのきの家の2階から1階へ、あるいはくすのきの家からけやきの家へ生活空間を移動することもあります。その際には担任もいっしょに移動しますし、移動のためのプログラムも用意され、新しい環境への戸惑いや不安をできるだけ軽減し、一人ひとりの成長に見あった環境となるよう、工夫されます。
くすのきの家の特徴としては、遊ぶところ、食べるところ、寝るところがゆるやかに分離されていながらも、仕切りが設けられていないことです。台所にも仕切りがなく、子どもたちは保育者の後を追いかけて出入り自由です。汁を温めたり、洗い物をしたり、それを干したりといった家庭的な振る舞いを子どもたちがいっしょに体験できることも、くすのきの家の特色です。
くすのきの家には縁側があります。掃きだしの大きな窓を開けると、そこには板の間があり、小さな園庭と砂場に続いています。木柵からは街の様子を見ることもできます。
くすのきの家は、実生の楠木を取り囲むように建てられています。この楠木をどうしても切りたくなかったのでそのような設計になったのですが、それがかえって変化にとんだ保育空間を演出することになりました。2階の出入口では、その楠木の幹に直接ふれることができます。そして建物の周囲はすべて、子どもが遊ぶ空間になっています。また、建物自体が呼吸できるように地下には透水管が縦横に通され、床や胸高の側壁には美山杉の間伐材が使用され、壁は珪藻土で塗られています。天井には掲示用の枠が付けられ、布団収納庫をはじめとする物入れ、0歳児用の着替えだななど、使い勝手と見た目の美しさが追及されており、全体として"時間がゆっくり流れる保育空間"になっています。 |