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落とし穴の一つは、作品展を目指して造形活動が行われると、子どもも保育者も追い込まれることになり、日々の保育がバランスを欠くことになります。作品展に向けて共同製作に取り組むことは悪くありませんが、描画も工作も作品展まえに集中してしまい、作品展が終わると来年まで見向きもしないようなことになってしまうくらいなら、作品展はないほうがいいでしょう。成果主義にならないことが大切です。
もう一つの落とし穴は、良い絵、上手な作品です。できあがった作品を評価することは当然のようですが、ほんとうでしょうか。ここまで述べてきたように、造形は、子どもと保育者が一緒になって、アイデアを出しあったり、工夫を凝らしたり、試行錯誤を繰り返しながら楽しむ活動です。ですからその過程はつねに創造的であり、予想を超えた展開になります。保育そのものです。ですから保育者によるドキュメンテーションが不可欠であると繰り返し述べてきたのですが、いくらコメントが付されてるといっても、その最終形である作品だけをみて評価することは、子どもの造形の正しい評価にはなりません。
このよくない作品主義は、保育者にも影響を与えます。保育者の中に良い絵、上手な作品が想定され、それに向けて子どもたちが追い込まれてしまう危険が作品主義にはあるのです。それでは保育者の思いが子どもを引っぱってしまい、一緒に創ることにはならなくなってしまいます。ところが一方で、技法と素材のところでふれたように、助言も必要ですから、そのあたりの加減が難しくなります。また、子どもの作品には、いつまで見ていても見飽きない優れたものもたくさんありますから、やはり良い絵の魔力に打ち克つことは容易ではありませんが、保育者の予想を超えて子どもが活動を展開するのだという原点に立ち返り、保育の一回性に保育の価値をみる姿勢を忘れてはならないでしょう。
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